「兵(つわもの)どもが夢の跡」
ー08八ヶ岳登頂記ー
-國破山河在 城春草木深 感時花濺涙 恨別鳥驚心
烽火連三月 家書抵萬金 白頭掻更短 渾欲不勝簪-
(国破れて山河あり 城春にして草木深し 時に感じては花も涙を濺ぎ
別れを恨んでは鳥も心を驚かす 烽火三月に連なり 家書萬金に抵る
白頭掻けば更に短く 渾に簪に勝えざらんと欲す 『春望』杜甫)
北八ヶ岳天狗岳への尾根

還暦デビューープロローグー
08年3月末の北八ヶ岳行、山上「春は名のみ」の残雪深く時に
零下十数度、冬山登山靴&十本爪アイゼン必携。
例の如く「精米行脚」もこなした不肖山人だが、今回、直前の春
彼岸に還暦過ぎ「説教師デビュー」の機会を得て、3/17~23の
7日間地元16会所を巡るも、この「説教マラソン」は一度出れば
途中棄権は許されぬとあって、その首尾や如何に?
又山荘の夜に試練のハプニングが待ち受けるとは仏のみぞ知る
二重八文字結
3/30日阿倍野から夜行バスに乗車した隆章、京都でKと合流、翌29日早朝中央道小淵沢下車、徒歩で茅野駅へ向かう。新宿から特急でNが到着、タクシーで登山口渋温泉へ。
積雪の樹林を登る途中アイゼン装着、靴裏全面着地ステップに足を慣らす。
ヒュッテ前アンザイレン練習
黒百合ヒュッテ到着後、用意周到のNが持参のザイルを使い、ダブル・エイト・ノット(二重八文字結)、ブルージック結び、ハーネス、カラビナ装着等のロープワーク基本技術を伝授。
早速ヒュッテ前の雪斜面に出てアンザイレン(ザイル取付)練習。全体重をかけた模擬滑落で、ブルージック結びの威力を体感。
氷点下天狗岳
翌30日早朝4:30、気温マイナス12℃、ヘッドランプ着けヒュッ
朝焼けの頂上直下 テ出発、
樹林の中山峠2496mを越え、雪庇の尾根は慎重にアイゼンを効かす。朝焼け空に足を止めるとダウンを通して寒気が凍みる。頂上直下の積雪岩場斜面をN先導のアンザイレンで登攀。
南八ヶ岳岩稜遠望
6:10北八ヶ岳最高峰天狗岳2646m頂上に立つ。
7:30ヒュッテ帰還。
N「積雪期登頂は立派」
隆章「自称なし中級OK?」
N「(笑って答えず。今後の縦走次第か?!)」
雪中縦走呻吟
ヒュッテを後に中山峠を過ぎ右にニュウの岸壁を見ながら尾
樹海に浮かぶ凍結白駒池 根筋を進み、
高見石に登れば凍結冠雪の白駒池が樹海に白く浮かぶ。
丸山2330mを越え麦草峠への縦走路、登り雪面でアイゼン捌きに難渋する隆章の足は滞りがち、この様子を懸念したNが
「大石峠の先、茶臼山越えで行くか、巻いて傾斜の緩い迂回路を行くか?」と提起。 三人は結局、最短直登
ル 力尽きた茶臼山越え
ートを選択するが、隆章の誤算は、茶臼山2384mを最後のピークと思い込み単調で急な登りで体力を消耗したこと、下り斜面は時に愉快な尻餅滑降(グリセード)あれど、第三の縞枯山2403m越えに呻吟して這々の体で山荘へ入る。
山上「釈迦説法」
縞枯山荘夕食時、三人が偶々「鳩居堂」(京都寺町)を話題にした所、耳にした同宿の中高年団体から突然質問を受ける。一行は奇遇にも当の京都から来た山友(遊?)会の面々で、喜んで熊谷直実末裔鳩居堂由来を解説した隆章、中に京都検定合格ボランティアガイドもいると聞いて、これぞ「釈迦に説法」の新境地也と独白。
夕食後、外は雪、一緒に山荘の炬燵を囲む御一行から、今度は即席法話の要望があるとKに勧められた隆章、一週間前辛くも「完走(完歩?)」したばかりの「説教マラソン」の情景が蘇り、聴衆に受けた(はずの?)「醒睡笑(聞き手の眠気を醒ます笑い話。落語の祖は説教なり)三題」(「パラダイス?欧米か!」「ソナノカケナイ、ニューヨーク編」「汝と汝は今ナンジ?」)を披露する羽目に陥る。
風流雪見露天
小斉温泉雪見露天 翌31日朝、山荘出発。夜来
の新雪を膝まで踏めば「透明なブルー」に輝く。
ロープウエイで山麓駅へ下り、タクシーで小斉温泉へ向かう途中の樹林帯は季節外れの春の大冠雪。源泉露天も風流な雪見と洒落る。
江戸眩暈二題ーエピローグ①ー
帰路、東京へ戻るNに同道、特急あずさで2時間余、新宿駅頭に愚息を待つ隆章、押寄せる人波に眩暈。
眩暈ティツィア-ノ「美神」
明けてお江戸は桜花爛漫の四月、父子目指すは上野国立美術館「ヴィーナス展」。
愚息に語るはトロイ戦争因縁「パリスの審判」故事、ルネサンス巨匠描く三女神随一の『美神』を間近に禮拝すれば、その蠱惑の視線に抗する術なき隆章、不覚再び眩暈。前庭に出て『地獄の門』を仰ぎ去来するは懺悔の念なるべし。
旧跡表敬二題ーエピローグ②ー
本郷通りから、「兵どもが夢の跡」安田講堂を表敬訪問すれば、煤けた石壁は攻防戦廃墟の如し。 廃墟然たる講堂入口
(「遅かりし内蔵助!」、隆章幸か不幸か「京の仇を江戸で討つ」籠城叶わずTV観戦)
愚息「何時の話?」
隆章「40年前かな」
時計の塔も意外に小振り。気乗り薄な愚息にお上りさん宜しく記念写真を撮らせる他に芸無し。
気を取り直し、漱石山人への挨拶を欠いては苟も山人の同名が廃ると、塔右手に回り縁の「三四郎池」を散策一周。通りへ出て第一書房を過ぎ、「こころ」の看板を掲げる茶店を見つけ一服、表敬仕上げとする。
ー08八ヶ岳登頂記ー
-國破山河在 城春草木深 感時花濺涙 恨別鳥驚心
烽火連三月 家書抵萬金 白頭掻更短 渾欲不勝簪-
(国破れて山河あり 城春にして草木深し 時に感じては花も涙を濺ぎ
別れを恨んでは鳥も心を驚かす 烽火三月に連なり 家書萬金に抵る
白頭掻けば更に短く 渾に簪に勝えざらんと欲す 『春望』杜甫)
北八ヶ岳天狗岳への尾根
還暦デビューープロローグー
08年3月末の北八ヶ岳行、山上「春は名のみ」の残雪深く時に
零下十数度、冬山登山靴&十本爪アイゼン必携。
例の如く「精米行脚」もこなした不肖山人だが、今回、直前の春
彼岸に還暦過ぎ「説教師デビュー」の機会を得て、3/17~23の
7日間地元16会所を巡るも、この「説教マラソン」は一度出れば
途中棄権は許されぬとあって、その首尾や如何に?
又山荘の夜に試練のハプニングが待ち受けるとは仏のみぞ知る
二重八文字結
3/30日阿倍野から夜行バスに乗車した隆章、京都でKと合流、翌29日早朝中央道小淵沢下車、徒歩で茅野駅へ向かう。新宿から特急でNが到着、タクシーで登山口渋温泉へ。
積雪の樹林を登る途中アイゼン装着、靴裏全面着地ステップに足を慣らす。
黒百合ヒュッテ到着後、用意周到のNが持参のザイルを使い、ダブル・エイト・ノット(二重八文字結)、ブルージック結び、ハーネス、カラビナ装着等のロープワーク基本技術を伝授。
早速ヒュッテ前の雪斜面に出てアンザイレン(ザイル取付)練習。全体重をかけた模擬滑落で、ブルージック結びの威力を体感。
氷点下天狗岳
翌30日早朝4:30、気温マイナス12℃、ヘッドランプ着けヒュッ
朝焼けの頂上直下 テ出発、
南八ヶ岳岩稜遠望
7:30ヒュッテ帰還。
N「積雪期登頂は立派」
隆章「自称なし中級OK?」
N「(笑って答えず。今後の縦走次第か?!)」
雪中縦走呻吟
ヒュッテを後に中山峠を過ぎ右にニュウの岸壁を見ながら尾
樹海に浮かぶ凍結白駒池 根筋を進み、
丸山2330mを越え麦草峠への縦走路、登り雪面でアイゼン捌きに難渋する隆章の足は滞りがち、この様子を懸念したNが
「大石峠の先、茶臼山越えで行くか、巻いて傾斜の緩い迂回路を行くか?」と提起。 三人は結局、最短直登
ートを選択するが、隆章の誤算は、茶臼山2384mを最後のピークと思い込み単調で急な登りで体力を消耗したこと、下り斜面は時に愉快な尻餅滑降(グリセード)あれど、第三の縞枯山2403m越えに呻吟して這々の体で山荘へ入る。
山上「釈迦説法」
縞枯山荘夕食時、三人が偶々「鳩居堂」(京都寺町)を話題にした所、耳にした同宿の中高年団体から突然質問を受ける。一行は奇遇にも当の京都から来た山友(遊?)会の面々で、喜んで熊谷直実末裔鳩居堂由来を解説した隆章、中に京都検定合格ボランティアガイドもいると聞いて、これぞ「釈迦に説法」の新境地也と独白。
夕食後、外は雪、一緒に山荘の炬燵を囲む御一行から、今度は即席法話の要望があるとKに勧められた隆章、一週間前辛くも「完走(完歩?)」したばかりの「説教マラソン」の情景が蘇り、聴衆に受けた(はずの?)「醒睡笑(聞き手の眠気を醒ます笑い話。落語の祖は説教なり)三題」(「パラダイス?欧米か!」「ソナノカケナイ、ニューヨーク編」「汝と汝は今ナンジ?」)を披露する羽目に陥る。
風流雪見露天
小斉温泉雪見露天 翌31日朝、山荘出発。夜来
ロープウエイで山麓駅へ下り、タクシーで小斉温泉へ向かう途中の樹林帯は季節外れの春の大冠雪。源泉露天も風流な雪見と洒落る。
江戸眩暈二題ーエピローグ①ー
帰路、東京へ戻るNに同道、特急あずさで2時間余、新宿駅頭に愚息を待つ隆章、押寄せる人波に眩暈。
明けてお江戸は桜花爛漫の四月、父子目指すは上野国立美術館「ヴィーナス展」。
愚息に語るはトロイ戦争因縁「パリスの審判」故事、ルネサンス巨匠描く三女神随一の『美神』を間近に禮拝すれば、その蠱惑の視線に抗する術なき隆章、不覚再び眩暈。前庭に出て『地獄の門』を仰ぎ去来するは懺悔の念なるべし。
旧跡表敬二題ーエピローグ②ー
本郷通りから、「兵どもが夢の跡」安田講堂を表敬訪問すれば、煤けた石壁は攻防戦廃墟の如し。 廃墟然たる講堂入口
(「遅かりし内蔵助!」、隆章幸か不幸か「京の仇を江戸で討つ」籠城叶わずTV観戦)
愚息「何時の話?」
隆章「40年前かな」
時計の塔も意外に小振り。気乗り薄な愚息にお上りさん宜しく記念写真を撮らせる他に芸無し。
気を取り直し、漱石山人への挨拶を欠いては苟も山人の同名が廃ると、塔右手に回り縁の「三四郎池」を散策一周。通りへ出て第一書房を過ぎ、「こころ」の看板を掲げる茶店を見つけ一服、表敬仕上げとする。
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